動画編集を安く始めるために、単体GPUを買わずに内蔵グラフィックスで済ませたい。その第一候補がRyzen 5 5600GとRyzen 5 8500Gだが、どちらを選んでも満足できるとは限らない。特に、予算が限られているほどマザーボードやメモリとの組み合わせで後悔しやすい。まずは、自分がどの条件に当てはまるかを整理するところから始めよう。
使い方によって答えが分かれる部分は、AMD Ryzen 5 8500Gの公式情報やAMD Ryzen 5 5600Gの公式情報を参考に、対応条件から判断します。
- システム全体の予算が6万円台なら、5600Gのプラットフォームが現実的
- 将来的なアップグレードを考慮するなら、8500GのAM5プラットフォームに分がある
- 使用する動画編集ソフトが重いほど、8500GのCPU性能が活きる
- 無料の編集ソフトや配信ソフトが中心なら、シングルスレッド性能の差に注目
- 内蔵GPUの世代差は、プレビューやGPUエフェクトで効いてくる
- ゲームも少し楽しみたいなら、8500Gの内蔵GPUが頼りになる
- 長時間の書き出しで気になる熱と騒音は、どちらもクーラー次第
- マザーボード選びで起こる追加コストの罠
- メモリ容量と速度の優先順位は、編集素材の重さで決まる
- 買うべきか待つべきかの判断基準
- 購入前に必ず確認したいチェックポイント
- よくある疑問と答え
システム全体の予算が6万円台なら、5600Gのプラットフォームが現実的
Ryzen 5 5600GとRyzen 5 8500Gは、どちらも6コア12スレッドで内蔵GPUを搭載するが、プラットフォームの世代が異なる。5600GはSocket AM4、8500GはSocket AM5に対応し、マザーボードとメモリの価格帯が大きく変わる。
もしシステム全体の予算を6万円台に抑えたいなら、5600Gの優位性は揺るがない。AM4マザーボードは1万円前後から選べ、DDR4メモリも16GBキットが5000円程度で手に入る。CPU自体の価格は変動するが、CPUクーラーが付属する箱入り版を選べば、さらにコストを削減できる。
一方、8500Gを選ぶ場合は、AM5マザーボードが最低でも1万5000円程度、DDR5メモリが16GBで1万円前後と、プラットフォーム費用だけで2万円以上の差がつく。CPU単体の価格差以上に、この周辺パーツの価格差が予算を圧迫する点を見落としてはならない。
将来的なアップグレードを考慮するなら、8500GのAM5プラットフォームに分がある
予算に少し余裕があり、将来的なCPU交換やPCIe 4.0対応の高速ストレージを活かしたいなら、8500Gのプラットフォームに投資する意味はある。AM5は今後数年は新しいCPUがリリースされる見込みで、後からRyzen 7やRyzen 9に載せ替える選択肢を残せる。
ただし、8500Gを選ぶ場合、マザーボードによっては初回起動時にBIOSアップデートが必要なことがある。USB BIOS Flashback機能がないボードでは、起動すらできない可能性があるため、購入前にマザーボードの対応状況を必ず確認する必要がある。この点は、AMDの公式サポートページで対応CPUリストを確認しておくと安心だ。
使用する動画編集ソフトが重いほど、8500GのCPU性能が活きる
動画編集といっても、使うソフトによってCPUへの負荷のかかり方はまったく違う。ここを混同したまま選ぶと、思ったほど快適にならない原因になる。
DaVinci ResolveやPremiere Proを使う場合、GPUアクセラレーションに強く依存するが、無料版のDaVinci ResolveではGPUの利用に制限があるため、CPUのマルチコア性能がものを言う場面も多い。Premiere Proもエンコード時にはCPUをフルに使う。
ベンチマークを見ると、Cinebench 2024のマルチコアスコアで8500Gが約742、5600Gが約589と、8500Gが約26%高い。これはZen 4アーキテクチャと高クロックの恩恵で、特に長尺の書き出しやエフェクトの多いタイムラインで差を感じやすい。
ただし、5600Gでも1080pの軽い編集なら実用範囲内だ。問題は、4K素材を扱い始めたり、ノイズリダクションやスタビライゼーションを多用したりしたときで、その差が作業のストレスに直結する。
無料の編集ソフトや配信ソフトが中心なら、シングルスレッド性能の差に注目
ShotcutやOBS Studioなど、GPUアクセラレーションが限定的なソフトでは、CPUのシングルスレッド性能が操作のレスポンスに響く。Geekbench 6のシングルコアスコアは8500Gが約2686、5600Gが約1896と、8500Gが約40%高い。これはタイムラインのスクラブやプレビューの滑らかさに影響する。
また、8500GはAV1ハードウェアデコードに対応しており、最新のコーデックを扱う場合にCPU負荷を下げられる。この点は、5600Gではサポートされないため、ソフトがAV1に対応しているかどうかも確認しておきたい。
内蔵GPUの世代差は、プレビューやGPUエフェクトで効いてくる
単体GPUを積まない前提では、内蔵GPUの性能がプレビューの滑らかさやエフェクトの処理速度を左右する。
5600GのRadeon Vega 7は、7nmプロセスで作られた実績のあるGPUだが、アーキテクチャはやや古い。一方、8500GのRadeon 740Mは4nmプロセスで作られたRDNA 3アーキテクチャで、同じ内蔵GPUでも世代が2つ進んでいる。
3DMark Time Spyのグラフィックスコアを比較すると、8500Gが約2800、5600Gが約1300と、2倍以上の開きがある。これはゲーム性能に直結するが、動画編集でもGPUエフェクトの処理やプレビューの描画に差が出る。
ただし、どちらの内蔵GPUも、本格的な4K編集や3Dレンダリングを快適にこなせるレベルではない。あくまで「単体GPUなしでどこまでできるか」という視点で、自分の編集スタイルに合うかを見極める必要がある。
ゲームも少し楽しみたいなら、8500Gの内蔵GPUが頼りになる
動画編集がメインでも、たまにゲームをプレイするなら、内蔵GPUの性能差は無視できない。
8500Gなら、軽量なeスポーツタイトル(VALORANT、League of Legendsなど)はフルHDで60fps以上を狙える。5600Gでも設定を下げればプレイ可能だが、フレームレートの安定感で劣る。
また、8500GはAFMF(AMD Fluid Motion Frames)に対応しており、ドライバレベルでフレーム補間が可能だ。対応タイトルでは、体感上の滑らかさが向上する。ただし、動画編集目的で買うなら、ゲーム性能はあくまで副次的な要素として考えたい。
長時間の書き出しで気になる熱と騒音は、どちらもクーラー次第
動画の書き出しは数十分から数時間に及ぶことがあり、その間のCPU温度と冷却ファンの騒音は意外と大きなストレス要因だ。
8500GはデフォルトのTDPが65Wだが、実際の負荷時にはもう少し電力を消費する。付属のWraith Stealthクーラーでも動作はするが、全コア負荷が続くとファンが高回転になりやすい。特に、Zen 4cコアは高密度で熱がこもりやすいため、ケースのエアフローが悪いと温度が上がりやすい。
5600Gも同じく65Wで、付属クーラーで運用できるが、7nmプロセスのため発熱は比較的穏やかだ。ただし、どちらも静音性を求めるなら、2000円程度のサイドフロー型CPUクーラーに交換するだけで、書き出し中の騒音は大幅に改善する。
また、電源ユニットの容量はどちらも最低300Wあれば十分だが、将来的に単体GPUを追加する可能性があるなら、最初から500W以上の電源を選んでおくと無駄にならない。
マザーボード選びで起こる追加コストの罠
8500Gを選ぶ場合、AM5マザーボードは安価なA620チップセットでも動作するが、VRMフェーズ数が少ないボードでは、長時間の高負荷時に性能が落ちることがある。特に、8500GはZen 4cコアを含むため、電力管理が適切でないと、思ったようなパフォーマンスが出ないケースがある。
5600Gなら、B450やA520マザーボードでも十分安定して動作し、BIOS更新の手間も少ない。ただし、新しく買うならB550マザーボードを選べば、PCIe 4.0対応のSSDを活かせるため、動画編集の素材読み込みが速くなる。
注意したいのは、8500Gを選んだ場合、マザーボードによっては初回起動時にBIOSアップデートが必要なことだ。USB BIOS Flashback機能がないボードでは、起動すらできない可能性があるため、購入前にマザーボードの対応状況を必ず確認する必要がある。この点は、AMDの公式サポートページで対応CPUリストを確認しておくと安心だ。
メモリ容量と速度の優先順位は、編集素材の重さで決まる
動画編集では、メモリ容量が足りないとスワップが発生し、作業が極端に遅くなる。最低でも16GB、可能なら32GBを確保したい。
5600GはDDR4メモリを使用するため、32GBキットでも1万円前後で手に入る。一方、8500GはDDR5メモリが必須で、32GBキットは2万円前後と倍近い価格差がある。
速度に関しては、DDR5-5200やDDR5-5600の帯域幅はDDR4-3200を大きく上回り、特に高ビットレートの素材を扱う場合に差が出る。ただし、容量を優先するなら、DDR4で32GBを選ぶ方が、DDR5で16GBに妥協するより現実的な選択になる。
買うべきか待つべきかの判断基準
ここまでの条件を踏まえて、最終的にどちらを選ぶか、あるいは別の選択肢を検討すべきかを整理しよう。
今すぐ5600Gを買うべき人
- システム全体の予算を6万円台に抑えたい
- 静音性や安定性を重視し、最新プラットフォームにこだわらない
今すぐ8500Gを買うべき人
- 予算に余裕があり、AM5プラットフォームに投資したい
- 4K編集や重いエフェクトを扱う予定がある
- たまにゲームもプレイし、内蔵GPUの性能を重視する
- AV1デコードなど、最新のコーデックを扱うことが多い
どちらも選ばず、待つべき人
- 半年以内に予算が増える見込みがあり、単体GPUを追加できる
- 動画編集を本格的に仕事にしたいが、今はまだ勉強段階
また、どうしても予算が厳しいが性能も欲しい場合は、中古のRyzen 5 5600と単体の格安GPU(GTX 1650など)を組み合わせるという手もある。ただし、中古には保証や故障リスクが伴うため、初心者にはあまり勧められない。
購入前に必ず確認したいチェックポイント
最後に、どちらのCPUを選ぶにしても、購入前に公式情報で確認すべき項目をまとめておく。
- マザーボードのCPU対応リスト:AMDの公式サポートページで、選んだマザーボードが目的のCPUに対応しているか、BIOSバージョンはいくつ必要かを確認する。特にAM5マザーボードは、初期BIOSでは8500Gを認識できない場合がある。
- 保証条件と初期不良対応:購入するショップの返品・交換条件を確認する。CPUの初期不良は稀だが、万が一に備えて、購入後すぐに動作確認できる環境を整えておく。
よくある疑問と答え
Q. 5600Gと8500Gで、実際の動画書き出し時間はどれくらい違う?
使用するソフトや設定によるが、Cinebench 2024のマルチコアスコアの差から、重いエフェクトを含む4K動画の書き出しでは、8500Gが20〜30%程度速くなる傾向がある。軽い編集では、差を感じないことも多い。
Q. 8500Gに付属のCPUクーラーで本当に大丈夫?
付属のWraith Stealthクーラーでも動作はするが、全コア負荷が続くとファンが高回転になり、騒音が気になることがある。静音性を求めるなら、別途CPUクーラーを購入した方が快適だ。
Q. 5600Gのマザーボードは、今後新しいCPUに交換できないの?
Socket AM4はRyzen 5000シリーズで最終世代のため、これより新しいCPUへの交換はできない。将来的なアップグレードを考えるなら、8500GのAM5プラットフォームに分がある。
Q. メモリは16GBでも足りる?
1080pの短い動画編集なら16GBでも作業できるが、4K編集やマルチタスクを行うなら32GBを推奨する。メモリ不足は作業効率に直結するため、予算が許すなら多めに積んでおきたい。
Q. どちらを選んでも、後悔しないための最終確認は?
自分の編集スタイルと予算を紙に書き出し、マザーボードとメモリを含めた総額を比較すること。そして、使用ソフトの推奨スペックを必ず確認し、内蔵GPUで本当に足りるのかを見極める。これらを怠らなければ、大きな失敗は避けられる。
結局のところ、Ryzen 5 5600GとRyzen 5 8500Gの選択は、予算と将来性のトレードオフに尽きる。今の作業内容と、これからやりたいことを照らし合わせ、自分がどちらの分岐に立っているかを冷静に判断してほしい。

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