会計ソフトなしで確定申告できる?Codexで帳簿作成を自動化してみた

会計ソフトを契約しなくても、確定申告はできます。 日々の取引を帳簿に記録し、必要な書類を保存したうえで、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作成・提出する方法があります。国税庁の申告書の提出方法

では、手間のかかる帳簿作成をCodexに任せると、どこまで自動化できるのでしょうか。

今回は、架空の個人事業主の取引データを使い、Codexで記帳用のPythonスクリプトを作成して実行しました。仕訳帳、総勘定元帳、月別集計を出力し、最後に預金残高と売掛金を照合するところまで試しています。

今回のデモで確かめたこと実行結果
元データの整理56行から完全一致の重複1行を除外し、55取引に整理
年間売上3,600,000円
年間の必要経費150,400円
青色申告特別控除前の事業利益3,449,600円
用途確認後の預金残高の差額0円

このデモで自動化したのは、決めたルールに従う記帳・集計・照合です。 税額計算やe-Taxへの申告送信は行っていません。

取引先、金額、証憑ID、用途確認の回答はすべて架空です。デモの対象は2025年1月1日〜12月31日、制度情報の確認日は2026年10月16日です。

会計ソフトなしで確定申告するために必要なこと

確定申告では、帳簿を作る作業と、申告書を作成・提出する作業を分けて考えると整理しやすくなります。

作業今回の方法
取引を記録するCSVに日付、取引先、内容、金額、証憑IDなどをまとめる
帳簿を作るCodexで作成したスクリプトで仕訳帳・総勘定元帳を生成する
年間の数字を確認する月別集計、損益、期末残高を検算する
申告書を作成・提出する確認した金額を国税庁の確定申告書等作成コーナーへ入力する
根拠資料を保存する請求書・領収書・電子取引データを所定の方法で保存する

国税庁の作成コーナーでは、確定申告書だけでなく、青色申告決算書や収支内訳書も作成し、e-Taxで送信できます。会計ソフトを購入すること自体が、申告の必須条件ではありません。国税庁の案内

一方、白色申告でも、事業所得などがある人には記帳・帳簿書類の保存が必要です。「ソフトを使わないから帳簿も不要」にはなりません。国税庁の記帳と保存に関する案内

青色申告の65万円控除も会計ソフトなしで受けられる?

2025年分・2026年分については、要件を満たせば可能です。 青色申告の承認を受け、複式簿記などの要件に従って記帳し、貸借対照表・損益計算書等を付けて期限内に申告する必要があります。国税庁の青色申告制度

最高65万円の青色申告特別控除には、55万円控除の要件に加えて、申告書と決算書等を期限内にe-Taxで送信する方法、または優良な電子帳簿の保存と必要な届出を行う方法があります。ExcelやCSVを保存しただけで、優良な電子帳簿になるわけではありません。国税庁の青色申告特別控除

本記事の65万円控除の説明は上記の年分が対象です。2027年分以後については、制度改正を反映した国税庁の案内を確認してください。年分別の記帳・控除の案内

Codexには帳簿を作るプログラムを書いてもらう

今回の使い方は、取引一覧と処理ルールを渡し、帳簿作成用のプログラムを作って実行してもらう方法です。Codex CLIの公式資料でも、ローカルファイルを調べ、編集し、コマンドを実行する使い方が案内されています。OpenAIのCodex CLI公式ドキュメント

デモではPythonでCSVを読み込み、仕訳・元帳・集計表を生成しました。確認用にはExcel形式のブックも用意しています。CSVの集計スクリプトはPython標準ライブラリだけで動作します。

継続して使う場合は、確認済みのルールをファイルとして残すと、同じ条件で処理を再実行できます。取引内容の分類や割合を変更した場合も、その変更点を確認できます。

なお、今回は銀行との自動連携や、領収書画像のOCRは使っていません。整形済みの架空CSVから処理を始めています。

デモに使う架空の個人事業主と取引データ

モデルは、Web保守業務を行う個人事業主です。毎月30万円の業務が月末に完了し、その時点で代金を受け取る権利が確定する契約としました。入金は翌月です。

計算の前提は次のとおりです。

年間の取引は、次の内容にしました。

内容設定年間の扱い
Web保守の売上月300,000円 × 12か月売上3,600,000円
売掛金の入金2〜12月に各300,000円回収3,300,000円。売上に重ねて計上しない
業務専用ソフト月5,500円 × 12か月支払手数料66,000円
自宅回線月6,000円 × 12か月通信費36,000円、家事分36,000円
文具・用紙8,800円 × 4回消耗品費35,200円
業務打合せの鉄道代6,600円 × 2回旅費交通費13,200円
私用の買物12,000円事業主貸。必要経費に含めない
用途未確認の買物19,800円確認前は保留。確認後は私用として事業主貸

ソフト利用料を「支払手数料」にしたのは、今回のデモの科目設定です。実務では取引の内容に合う科目方針を決め、継続して使います。

また、50%という家事按分の割合に一般的な保証はありません。実際には、利用状況などから事業に必要な部分を説明できる根拠が必要です。国税庁の必要経費の知識

Codexに渡す指示は処理ルールまで具体的にする

「確定申告用の帳簿を作って」だけでは、入金を売上として二重に数えたり、私用の支出まで経費に含めたりする余地が残ります。今回のデモを再現するなら、次のように依頼できます。

このフォルダの架空の2025年分データから、帳簿作成スクリプトを作成して実行してください。

入力は transactions_raw.csv、bank_statement.csv、rules.json です。
元データは変更せず、出力は別フォルダへ保存してください。

・invoiceは役務完了と代金請求権の確定を表します。
  売掛金/売上高として計上してください。
・receiptは請求書IDで対応する売掛金の回収として扱ってください。
・回線代は事業分を通信費、家事分を事業主貸に分けてください。
・私用の支出は経費に含めないでください。
・用途不明の取引は推測で分類せず、未確認一覧に出してください。
・同一取引IDで全項目が一致する重複は、2件目を除外して記録してください。
  同一IDで内容が異なる場合は、処理を止めて知らせてください。

仕訳帳、総勘定元帳、月別集計、試算表、確認記録を出力してください。
借方と貸方の合計、銀行明細との預金差額、請求と回収から求めた売掛金残高を確認し、
未確認取引や差額がある場合は、中間結果だと分かるようにしてください。

この依頼文は再現用の例です。実際に検証した成果物は、添付のスクリプトと帳簿データです。同じ文章を送れば、常に同じプログラムが生成されるという意味ではありません。

実行すると売上と入金を分けた仕訳ができた

生成された仕訳の一部を抜き出すと、次のようになります。

日付借方貸方金額内容
2025年1月15日支払手数料普通預金5,500円当月の業務専用ソフト
2025年1月20日通信費普通預金3,000円自宅回線の事業分
2025年1月20日事業主貸普通預金3,000円自宅回線の家事分
2025年1月31日売掛金売上高300,000円1月分の業務完了・権利確定
2025年2月10日普通預金売掛金300,000円1月分の入金

1月末に売上を記録しているため、2月の入金では売掛金を減らします。入金時にもう一度売上を増やすと、同じ仕事を二重に集計してしまいます。

12月分の30万円も、デモの契約では2025年中に収入の権利が確定しています。入金は2026年1月なので、2025年末には売掛金として残りました。

国税庁も、原則として、年末までに受け取っていなくても収入すべき権利が確定した金額をその年の収入とすると説明しています。現金主義を選択できる場合などの例外があるため、実際の計上時期は契約や取引内容と合わせて確認します。国税庁の収入金額とその計算

年間の損益と期末残高を集計した結果

確認を終えたデータの損益は次のとおりです。

項目金額
売上高3,600,000円
支払手数料66,000円
通信費36,000円
消耗品費35,200円
旅費交通費13,200円
必要経費の合計150,400円
青色申告特別控除前の事業利益3,449,600円

計算は、3,600,000円 − 150,400円 = 3,449,600円です。この利益は、所得税の納税額や課税所得を示す金額ではありません。申告時には、適用できる青色申告特別控除や所得控除などを別途反映します。

期末の普通預金は3,381,800円になりました。架空の銀行明細から計算しても同じ金額になります。

期首預金 300,000円
+ 年内の売掛金回収 3,300,000円
− 年内の口座出金 218,200円
= 期末預金 3,381,800円

口座出金218,200円のうち、必要経費は150,400円、私用部分は67,800円です。年末の売掛金30万円もあるので、利益と口座残高は一致しません。

個人の青色申告決算書の並べ方に合わせた残高の集計例では、資産側に普通預金3,381,800円、売掛金300,000円、事業主貸67,800円を表示しました。合計3,749,600円は、元入金300,000円と控除前利益3,449,600円の合計に一致しています。

ここでの事業主貸は、事業のお金を私用に振り替えた記録です。利益を減らす必要経費には含めません。

用途不明の1万9800円を保留すると差額を検出できた

今回のデモでは、あえて重複データと用途不明の支出を混ぜました。

同じ取引IDの完全一致データを1行除外

元CSVの56行のうち、1行は3月のソフト利用料を重複させたものです。取引IDと全項目が一致したため、2件目を除外し、55取引として処理しました。

この検証で確認できたのは、今回のIDとデータ構造で重複を除外できることです。実際の銀行CSVとカードCSVを混ぜる場合は、カード利用と引き落としを対応付けるなど、別の照合ルールが必要になります。

用途が分からない取引は自動で経費にしない

用途未確認の買物19,800円は、初回の処理で仕訳を保留しました。その結果、帳簿の預金残高は銀行明細より19,800円多くなり、未完成の中間結果として検出できました。

その後、「家族用の買物だった」という架空の確認結果を別ファイルで渡し、全額を事業主貸にして再実行しました。

確認段階保留件数帳簿と銀行明細の預金差額
用途確認前1件19,800円
私用と確認した設定を反映後0件0円

この差額の変化は、実際にスクリプトを実行して確認した結果です。架空の用途回答を反映したもので、実在する領収書を確認した実績ではありません。

さらに、同一IDで金額が異なるデータ、対象年以外の日付、請求額を超える入金を与えると、処理がエラーになることも確認しました。

借方と貸方が一致するだけでは、取引の抜けや誤分類は見つからない場合があります。元データと残高を照合し、用途不明の取引を残しておくことで、確認すべき場所が分かりやすくなりました。

帳簿ができた後に確定申告へ進む手順

今回作ったCSVやExcelブックは、確認用の帳簿と集計表です。国税庁へそのまま提出する申告データではありません。

実際の申告では、次の順に進めます。

  1. 1年分の取引と期首残高をそろえ、売掛金・未払金・固定資産などの決算項目を確認する。
  2. 帳簿の売上・経費・期末残高を、請求書や明細などの根拠資料と照合する。
  3. 対象年分の「確定申告書等作成コーナー」で、青色申告決算書または収支内訳書を作成する。
  4. 所得税の申告書に必要なその他の所得や控除などを入力し、提出内容を確認する。
  5. e-Taxで送信し、受付結果と提出データを保存する。納税が必要な場合は納付も行う。

作成コーナーには、決算書・収支内訳書を作成してから、続けて所得税の申告書を作る流れが用意されています。e-Taxの決算書作成に関するFAQ

このデモで生成したCSVを、作成コーナーにそのまま取り込めることは確認していません。集計済みの金額を確認して入力する想定です。

帳簿を作っても請求書や領収書の保存は必要

帳簿の行に証憑IDを付けても、それだけで証拠書類を保存したことにはなりません。今回の証憑IDはすべて架空で、実際の証憑ファイルも含んでいません。

実務では、帳簿と根拠資料を対応付けて保存します。メールなどで受け取った請求書・領収書等の電子取引データは、原則として電子データで保存し、適用される保存要件を確認する必要があります。国税庁の電子取引データ保存の案内

Codexでの帳簿自動化が役立つ場面と追加対応が必要な場面

今回のように、取引の種類が少なく、日付や金額が整理され、分類ルールを説明できるケースでは、記帳の自動化を試しやすいと感じました。

自動化を試しやすい条件追加の設計や確認が必要な条件
同じ種類の売上や経費が繰り返される在庫、減価償却、外貨、給与などがある
取引IDや請求書IDを付けられる複数の銀行・カード明細の対応付けが必要
事業用と私用を説明できる用途や按分の根拠が整理できていない
生成した帳簿を確認する担当者がいる税務上の区分や処理方法の判断が難しい

会計ソフトの契約を省けても、Codexの利用環境や利用料金、スクリプトの保守、制度改正への対応は別に考える必要があります。費用だけでなく、毎月の確認にかかる手間を含めて選ぶと判断しやすくなります。

まずは実データと分けた架空データで処理を確かめ、実務に使うときは、自分の取引に必要なルールを追加していく方法が現実的です。

会計ソフトなしの確定申告とCodexのよくある質問

ExcelやCSVだけで確定申告できる?

ExcelやCSVで帳簿を作ることはできます。申告書や青色申告決算書・収支内訳書は、国税庁の確定申告書等作成コーナーなどで別途作成・提出します。帳簿の保存方法も確認が必要です。国税庁の申告書の提出方法

Codexで帳簿を作れば確定申告まで終わる?

今回のデモでは、帳簿作成と集計・照合までです。実際の申告には、決算項目の確認、控除等の入力、申告書の提出、必要に応じた納付が残ります。

自宅の通信費は半分を経費にしてよい?

50%はこのデモだけの仮定です。実際に必要経費にできるのは、記録などに基づいて、業務に必要だったことを明らかに区分できる部分です。国税庁の必要経費の知識

売上が振り込まれた年に計上すればよい?

原則として、入金日だけで判断せず、収入すべき権利が確定した時期を確認します。今回の12月分30万円は2025年の売上、年末の売掛金として扱いました。現金主義を選択する場合などは扱いが異なります。国税庁の収入金額とその計算

Codexが出した数字はそのまま申告に使える?

元データの不足、科目や計上時期の設定ミスは、計算結果にも反映されます。生成された帳簿を明細や証憑と照合し、税務判断が難しい項目は税務署や税理士に確認してから申告内容へ反映します。

今回作成した帳簿と再現用データ

確認用のExcelブックには、「損益と残高」「仕訳帳」「総勘定元帳」「取込データ」「確認記録」の5シートを収録しました。仕訳帳は、期首残高を含む56伝票・68行です。自宅回線の事業分と家事分を分けているため、取引数と仕訳の行数は一致しません。

再現用データには、元CSV、架空の銀行明細、処理ルール、用途確認の設定、Pythonスクリプト、確認前後の集計結果を含めています。

python bookkeeping_demo.py --unreviewed
python bookkeeping_demo.py
python verify_demo.py

最初のコマンドで用途確認前の中間結果、次のコマンドで確認後の結果を作成し、最後のコマンドで5件の検証を実行できます。Excelブックは記帳スクリプトの実行結果から別途生成した確認用ファイルです。CSVやルールを書き換えても、添付済みのExcelブックは自動更新されません。

会計ソフトなしで申告する方法を検討するなら、まずはこのように、元データから帳簿を作り、数字を追いかけられる状態を用意するところから始められます。