Synology NASを使い続けてきたが、容量不足やパフォーマンスの限界を感じ、新しいNASへの移行を考え始めるタイミングは必ず訪れる。特にPlusシリーズを中心に検討している場合、移行前にデータとアプリをどう整理するかで迷う人は多い。移行方法はいくつか用意されているが、手順を間違えるとサービスが長時間停止したり、アプリの設定が引き継げず再構築が必要になったりする。この記事では、Synology NASから別のNASへ移行する前に、データとアプリの整理で失敗しないための確認順と判断基準をまとめる。
Synology NAS移行で迷う背景と最初に決めるべきこと
NASの移行を検討する理由は人によって異なる。ドライブベイが足りなくなった、10GbE対応が必要になった、DSMのバージョンが古くセキュリティ更新が終了した、あるいは動画編集用に高速なオールフラッシュモデルを試したい、などだ。しかし、移行を始める前に「本当に今、買い替えるべきか」を立ち止まって考えることが重要になる。
移行か、拡張か、それとも現状維持か
新しいNASを購入する前に、現行機の拡張で要件を満たせないか確認する。Synology NASでは拡張ユニットを増設できるモデルがある。例えば、Plusシリーズの一部はRX418やRX1225RPといった拡張ユニットに対応しており、ドライブベイを追加できる。拡張ユニットの対応有無や最大ドライブ数は、Synology製品一覧で各モデルの仕様を確認する必要がある。拡張で済むなら、移行の手間やダウンタイムを回避できる。
また、使用中のNASがまだサポート期間内で、ファームウェア更新が提供されているなら、急いで移行する必要はない。サポート状況はSynologyダウンロードセンターで製品ごとの最新DSMバージョンや更新履歴を確認できる。
移行先のNASを選ぶ基準
移行を決断したら、次は移行先の機種選びだ。単に「新しいモデル」ではなく、現在の利用状況と将来の拡張を見据えた選択が求められる。以下の観点で候補を絞り込む。
- ドライブベイ数と拡張性:現在のデータ量と年間増加量から、最低でも3〜5年は耐えられるベイ数を選ぶ。拡張ユニットの対応も視野に入れる。
- CPUとメモリ:Dockerコンテナや仮想マシンを動かすなら、Intel系CPUを搭載したPlusシリーズ以上が望ましい。メモリは後から増設できるモデルとできないモデルがあるため、購入前に仕様を必ず確認する。
- 対応アプリケーション:移行後も同じパッケージが利用できるか、Synology公式のパッケージ互換性リストで確かめる。特にSurveillance StationやActive Backup for Businessなど、ライセンスが絡むものは注意が必要だ。
移行前に必ず実施するデータとアプリの整理
いよいよ移行作業に入る前に、データとアプリの整理を徹底する。このステップを怠ると、移行後に不要なファイルで容量を圧迫したり、アプリの設定が引き継げず再設定に追われたりする。
不要なデータの削除と重複排除
長期間運用しているNASには、重複ファイル、一時ファイル、古いバックアップ、使われなくなった共有フォルダが蓄積している。移行前にこれらを整理することで、移行時間の短縮と移行先の容量節約につながる。
- バージョン管理の見直し:Synology Driveのバージョン履歴やHyper Backupの世代管理が過剰になっていないか確認し、不要な世代を削除する。
- 一時ファイルとゴミ箱:ダウンロードフォルダや各共有フォルダのゴミ箱を空にする。
アプリとパッケージの棚卸し
移行時、すべてのパッケージが自動的に移行されるわけではない。特に、サードパーティ製やコミュニティ提供のパッケージは移行対象外になることが多い。事前に以下の確認を行う。
- 使用中のパッケージ一覧をDSMで確認:パッケージセンターからインストール済みのパッケージをリストアップする。
- 各パッケージの移行可否を調査:Synology公式のMigration Assistantの機能説明では、対応パッケージと制限事項が案内されている。公式パッケージでもバージョンによって移行できないケースがあるため、事前に確認する。
- 設定のバックアップ:Hyper Backupや設定バックアップ機能を使って、システム設定とパッケージ設定を個別にエクスポートする。
- ライセンスの移行準備:Surveillance Stationのカメラライセンスなど、ハードウェアに紐付くライセンスは移行前に解除手続きが必要な場合がある。
ユーザー権限と共有フォルダの見直し
移行を機に、ユーザーアカウントや共有フォルダのアクセス権限を整理する。使われなくなったアカウントの削除、部署異動に伴う権限変更、プロジェクト終了に伴うフォルダのアーカイブなどを行う。移行後の再設定を最小限にするため、現在の設定を記録しておくことも有効だ。
ハードウェア互換性と移行方式の選択
データとアプリの整理が済んだら、実際の移行方式を決定する。Synology NASでは主に3つの方法が提供されており、状況に応じて最適な方法が異なる。
HDD/SSDの互換性確認
移行方式によっては、既存のドライブをそのまま移行先に装着する「ドライブ移行」が利用できる。しかし、この方法が使えるのは、移行元と移行先のモデルが特定の条件を満たす場合に限られる。必ずSynologyナレッジセンターの互換性リストで、ドライブ移行がサポートされているか確認する。
また、新しいNASで使用するHDDやSSDがメーカーの互換性リストに掲載されているかも確認する。リストにないドライブを使うと、温度やSMART情報が正しく取得できず、故障予測が働かないリスクがある。
移行方式の比較
| 移行方式 | メリット | デメリット | 向いているケース |
| — | — | — | — |
| Migration Assistant | サービス停止が最小限、データ・設定・パッケージを一括移行 | 移行元と移行先の両方が稼働している必要がある | 同じSynology NAS間で、ダウンタイムを避けたい場合 |
| ドライブ移行 | 物理的にドライブを移動するだけ、再設定不要 | 対応モデルが限られる、移行中は完全停止 | 対応機種で、手軽に移行したい場合 |
| 設定バックアップと復元 | 柔軟性が高い、異なるモデル間でも可能 | データは別途コピーが必要、パッケージ設定が復元されないものもある | システム設定だけを引き継ぎ、データは新規に構成したい場合 |
Migration Assistantを使う場合は、移行先のストレージプールを移行元と同じかそれ以上のサイズで作成する必要がある。詳細な手順はSynology NAS間のデータ移行ガイドに従う。
RAIDとバックアップを分けて考える
移行のタイミングで、ストレージの構成を見直す絶好の機会でもある。特に「RAIDはバックアップではない」という原則を再確認し、データ保護の設計を強化する。
RAIDレベルの選択
新しいNASでは、ドライブ構成を一から設計できる。よく使われるRAIDレベルは以下の通り。
- SHR(Synology Hybrid RAID):異なる容量のドライブを混在でき、柔軟に容量を拡張できる。初心者や小規模環境に推奨。
- RAID 10:ミラーリングとストライピングの組み合わせ。高速だが、容量効率は低い。
どのRAIDを選ぶにしても、ディスク故障からの復旧はできるが、誤削除やランサムウェア、筐体故障には対応できない。必ず外部バックアップを併用する。
バックアップ戦略の再構築
移行を機に、3-2-1ルールに沿ったバックアップ体制を整える。
- Hyper Backup:別のNASや外付けHDD、クラウドストレージへの定期バックアップ。
- Snapshot Replication:共有フォルダのスナップショットを取得し、短時間での復旧を可能にする。
- USB Copy:外付けドライブへの自動コピー。
また、バックアップの復旧手順を実際にテストしておくことも重要だ。バックアップが正常に取れているか、復元にどれだけ時間がかかるかを移行前に把握しておけば、万が一の際に慌てずに済む。
移行後の確認とトラブルシューティング
移行が完了したら、以下の項目を順に確認する。
サービスとアプリの動作確認
- パッケージの状態:移行されたパッケージが正常に起動し、設定が引き継がれているか。
- ユーザー権限:ユーザーやグループの権限が正しく反映されているか。
パフォーマンスとログの監視
- リソースモニター:CPU、メモリ、ディスクI/O、ネットワーク使用率を確認し、想定通りのパフォーマンスが出ているか。
- ログセンター:システムログや接続ログをチェックし、エラーや警告が出ていないか。
旧NASの処分とデータ消去
移行が完全に成功したら、旧NASのデータを安全に消去する。DSMの「データ消去」機能を使うか、ドライブを取り出して物理破壊する。特に個人情報や機密データを含む場合は、復元不可能な方法で処理する。
買うべき人・待つべき人・別候補がよい人
最後に、Synology NASへの移行を検討している人が、どのタイミングで行動すべきかの判断基準をまとめる。
今、移行すべき人
- ドライブベイが満杯で、拡張ユニットも非対応またはコストが見合わない。
- 1GbEでは業務に支障が出るほどネットワーク速度がボトルネックになっている。
- 新しいDSMの機能(Active Insightやフルシステムスナップショットなど)がどうしても必要。
待つべき人
- 現行機がまだサポート期間内で、ファームウェア更新も継続している。
- 容量不足が軽微で、不要データの削除やアーカイブでしばらく延命できる。
- 近い将来、新モデルの発表が噂されており、購入後に後悔しそう。
別の候補を検討すべき人
- SynologyのPlusシリーズにこだわりがなく、コストパフォーマンスを重視するなら、他社製NASも視野に入れる。QNAPやAsustorなど、同価格帯でより高いハードウェアスペックを提供するメーカーもある。
- そもそもNASがオーバースペックで、クラウドストレージで十分なケース。小規模なファイル共有やバックアップだけなら、Dropbox BusinessやGoogle Workspaceで代替できる。
購入前チェックリストとFAQ
購入前チェックリスト
- [ ] 移行先NASのドライブベイ数と拡張ユニット対応を公式仕様で確認したか
- [ ] 移行方式(Migration Assistant/ドライブ移行/設定バックアップ)を決定したか
- [ ] 重要なパッケージが移行先でも利用可能か確認したか
- [ ] バックアップを最新の状態にし、復旧テストを行ったか
- [ ] ライセンスの移行手続きが必要なパッケージがないか
- [ ] 保証条件と初期不良対応を確認したか
よくある質問
Migration Assistantで移行中にエラーが出た場合の対処法は?
まず、移行元と移行先のDSMバージョンが同じか確認する。バージョンが異なると正常に動作しないことがある。また、ネットワークが安定しているか、ファイアウォールで必要なポートがブロックされていないかも確認する。エラーの詳細はログセンターで確認し、解決しない場合はSynologyサポートに問い合わせる。
ドライブ移行はどんなモデル間で可能?
ドライブ移行は、同じCPUアーキテクチャ(IntelからIntel、ARMからARMなど)のモデル間でサポートされることが多いが、例外もある。具体的な対応表はSynologyナレッジセンターで必ず確認する。
移行後にパッケージの設定が消えた場合、どう復元する?
Migration Assistantで移行されないパッケージは、手動で再インストールし、事前にエクスポートした設定ファイルをインポートする。設定ファイルのエクスポート機能がないパッケージは、スクリーンショットなどで設定を記録しておく必要がある。
移行中にデータが破損するリスクは?
公式の移行手順に従う限り、データが破損する可能性は極めて低い。しかし、万が一に備えて、移行前に必ず完全なバックアップを取得する。また、移行中はUPS(無停電電源装置)を接続し、停電による中断を防ぐことが推奨される。
移行先のNASでRAIDを構築する際の注意点は?
新しいNASでは、ドライブをすべて装着してから電源を入れ、ストレージプールを作成する。既存のドライブを移行する場合は、ドライブ移行の手順に従い、電源オフの状態で移行する。誤って初期化しないよう、注意深く手順を確認する。

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