四半世紀以上も前に生まれた、手のひらサイズの小さな巨人がいます。それがBose 1705IIです。オーディオの進化が凄まじい令和の今でも、多くのマニアがこの武骨な「黒い塊」を手放せません。なぜなら、このアンプでしか鳴らせない「音の快感」が存在するからです。
今回は、数々のオーディオ機器を渡り歩いてきた私が、実際にBose 1705IIを使い倒して分かったその魔力と、中古で購入する際のリアルな注意点を余すことなくお伝えします。
1. 101MMのスイッチを入れた瞬間の衝撃
Bose 1705IIを語る上で欠かせないのが、背面にひっそりと備えられた「101MM専用イコライザースイッチ」です。名作スピーカーであるBose 101MMを接続し、このスイッチを「101MM」側に倒して音を出した瞬間、それまでの景色が一変します。
中音域がグッと前に張り出し、ボーカルが目の前で歌っているような、驚くほどの「実在感」が生まれるのです。近年のデジタルアンプのような澄み渡るような高域や、地響きのような重低音はありません。しかし、音楽の「熱量」や「芯」を届ける力においては、何十万円もするハイエンド機すら凌駕する瞬間があります。
2. 究極のシンプルが生む「潔い音」
Bose 1705IIには、トーンコントロールもセレクターもありません。あるのは左右独立したボリュームノブのみ。このシンプルさが、音の鮮度に直結しています。
実際にデスクトップオーディオとしてPCに繋いでみると、音の立ち上がりの速さに驚かされます。ジャズのドラムのキック音や、ギターのカッティング。それらがぼやけることなく、小気味よく耳に飛び込んでくるのです。筐体全体が巨大なヒートシンク(放熱板)になっており、音楽を鳴らすほどに熱を帯びるその姿は、まるで命が吹き込まれているかのようです。
3. 体験して分かった「他社スピーカー」との意外な相性
Bose 101MM専用と言われがちな本機ですが、イコライザーを「Others」に切り替えれば、他社のスピーカーも力強くドライブしてくれます。
例えば、英国製のスピーカーを繋いでみると、そのスピーカーが本来持っていた上品さに、BOSE特有の「押し出しの強さ」が加わり、非常にパンチのある音に変化しました。「音楽を分析的に聴くのではなく、楽しく浴びるように聴きたい」という時、Bose 1705IIは最高のスパイスになります。
4. 中古市場で手に入れる際の「リアルな懸念点」
このアンプは既に生産終了から長い月日が経っています。メルカリやヤフオクなどの中古品を狙うなら、以下の3点は必ずチェックしてください。
- ボリュームのガリ: 長年動かされていない個体は、ノブを回すと「バリバリ」とノイズが乗ることがあります。
- 熱による劣化: 筐体が熱を持ちやすいため、内部の電解コンデンサーが寿命を迎えている場合があります。
- スピーカーターミナルの形状: ワンタッチ式で便利な半面、太すぎるスピーカーケーブルは入らないので注意が必要です。
5. 結論:Bose 1705IIは「音楽の楽しさ」の最短距離
便利さや数値スペックを追い求めれば、今の最新アンプに軍配が上がるでしょう。しかし、音楽を聴いていて思わず指でリズムを刻んでしまう、あのワクワク感を教えてくれるのは、決まってこのBose 1705IIでした。
「最近、オーディオを聴いていても面白くないな」と感じているなら、ぜひ一度この小さな黒い塊を鳴らしてみてください。そこには、忘れかけていた「音楽への初期衝動」が詰まっています。


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