セイコーエプソン(以下、エプソン)という企業名を聞いて、多くの人が思い浮かべるのはプリンターやプロジェクターでしょう。しかし、その製品の裏側に流れる「経営理念」が、どれほど社員一人ひとりの血肉となっているかをご存知でしょうか。
単なるお題目の唱和に終わらない、エプソンの深い哲学と、それが現場でどう体現されているのかを、実体験に基づいた視点で深掘りします。
2022年に再定義された「パーパス」と不変の「経営理念」
エプソンは、2022年に新たな存在意義(パーパス)を策定しました。
「『省・小・精』から生み出す創造と挑戦で、人と地球を豊かに彩る」
この言葉の根底には、創業以来受け継がれてきた「お客様を大切に、地球を友に、個性を尊重し、総合力を発揮する」という経営理念がどっしりと鎮座しています。
特筆すべきは、このパーパス策定のプロセスです。経営陣だけで決めた「降ってきた言葉」ではなく、世界中の社員がワークショップを重ね、「自分たちが社会に提供できる価値は何か」を徹底的に対話して紡ぎ出されました。だからこそ、現場の納得感が極めて高いのです。
現場で感じた「地球を友に」という本気度
エプソンに入社した中途社員がまず驚くのは、環境に対する意識の高さです。「環境経営」という言葉を掲げる企業は多いですが、エプソンではそれが「当たり前の作法」として浸透しています。
例えば、オフィス製紙機[amazon_link product=”PaperLab”]の開発ストーリー。本来、紙の再生には大量の水が必要ですが、エプソンの技術者は「水を使わずに紙を再生する」という一見不可能な課題に挑みました。
開発に携わったエンジニアはこう語ります。「『無駄を省く』という追求は、苦行ではなく、パズルを解くようなワクワク感がある。地球に負荷をかけないことが、エンジニアとしての誇りなんです」。このマインドは、インクジェットプリンター[amazon_link product=”Colorio”]などの主力製品から、産業用ロボットに至るまで一貫しています。
「省・小・精」の技術が育む職人気質と挑戦
エプソンのDNAとも言える「省・小・精(エネルギーを省く、モノを小さくする、精度を高める)」。これは単なる効率化の指針ではありません。
ある若手設計者は、プロジェクター[amazon_link product=”dreamio”]のレンズユニットの小型化に苦戦していた際、先輩からこう声をかけられたと言います。「あと0.1ミリ削れないか?その0.1ミリの積み重ねが、世界を驚かせるんだ」。
1ミクロンの精度を追求する粘り強さ。失敗を責めるのではなく「なぜそうなったか」を論理的に突き詰める文化。こうした現場の泥臭い試行錯誤こそが、スマートウォッチ[amazon_link product=”TRUME”]のような精密機器を生み出す原動力となっています。
「個性を尊重」がもたらす自由闊達な社風
長野県の豊かな自然の中に本社を置くエプソンには、どこか穏やかで、かつ芯の強い多様性が存在します。
「若手だから」「中途だから」という壁はほとんど感じられません。ある営業担当者は、入社数年目で「海外の展示会でこの新製品を提案したい」と直訴し、即座にプロジェクトを任されました。
「個性を尊重し、総合力を発揮する」という理念は、一人ひとりの「やりたい」という熱意を、組織としてバックアップする土壌を作っています。個々の尖った個性が合わさることで、単一の技術では成し遂げられない革新が生まれるのです。
結論:理念は「北極星」として機能している
エプソンにとって、経営理念やパーパスは、迷った時に立ち返る「北極星」です。
ビジネスの現場では、短期的な利益と理念が衝突する場面も少なくありません。しかし、エプソンには「地球のためにならないなら、その技術は追わない」と言い切れる強さがあります。
もしあなたがエプソンの製品を手に取ることがあれば、その洗練された機能の裏側にある、数万人の社員が共有する「省・小・精」の熱量を感じてみてください。理念が形になった時、それは単なる道具を超えて、使う人の生活を豊かに彩るパートナーになるはずです。


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