DTMや宅録、配信を始めると「モニターヘッドホン、おすすめは?」で一度止まる。結論から言うと、正解は1本じゃない。音漏れNGの部屋なのか、長時間作業なのか、PC直挿しなのかオーディオインターフェースがあるのか。ここで候補がガラッと変わる。
ただ、選び方の軸さえ先に決めれば迷いは減る。この記事はその軸を作ってから、用途にハマる定番10本に落とし込む流れでまとめた。
モニターヘッドホンは「気持ちよさ」より「粗が見える」
モニターヘッドホンは、低音が盛れて気持ちいいより、ミスが目につく方向に寄っている。ボーカルの歯擦音、キックの余韻、リバーブのかかり過ぎ、左右の定位のズレ。そういう“直したいポイント”が出てくるほうが、作業は早い。
逆に、普段聴きのヘッドホンで作ったミックスを別環境で流すと、低音が膨らんだり、シンバルだけ刺さったりする。そこで「フラット寄りの基準」が欲しくなる。
失敗しない選び方は3つだけ
1)密閉か開放か:音漏れと集中力で決める
夜に作業する、家族がいる、マイク録りがある。こういう条件なら密閉型が安心。逆に、蒸れやすい人や長時間ミックス中心なら開放型のラクさが効いてくる。どちらが上という話ではなく、生活に合うほうが勝ち。
2)インピーダンス:PC直挿し派は特に注意
「音は出るけど小さい」「低音が痩せる」みたいな事故は、鳴らしにくいモデルを直挿しした時に起きやすい。まずは自分の環境で“ちゃんと鳴る”ことを優先したほうがいい。オーディオインターフェースやヘッドホンアンプがあるなら選択肢は広がる。
3)装着感:30分で分かるのに、買ってから後悔しがち
側圧が強いと集中力が落ちるし、暑い季節は蒸れで休憩が増える。ここはスペック表より体感が正しい。可能なら試聴で、最低でも30分はつけた時の違和感を想像しておきたい。
試聴・自宅チェックのコツ(体験寄りのやり方)
店頭や届いた直後に、いきなり爆音にしない。小音量でボーカルの輪郭、次に普通音量でキックの締まり、最後にシンバルの刺さり具合を見ていく。曲は、声が近い曲・低音が強い曲・空間系が入った曲を1曲ずつ用意すると迷いにくい。
それでも判断がつかない時は「長く使えそうか」に戻る。音の好みは慣れで追いつくことがあるけど、痛みや蒸れは慣れにくい。
おすすめ10選:用途に合わせて刺さる順に
まず“入門で外しにくい”ところからいく。コスパ重視なら Audio-Technica ATH-M20x が候補に残りやすい。初めての1本で、ミックスの荒探しを覚えるには十分。もう少し解像感とバランスを取りたいなら Audio-Technica ATH-M40x がちょうど良い位置にいる。
「迷ったらこれ系」と言われやすい万能寄りは Audio-Technica ATH-M50x。低域から高域まで破綻が少なく、DTM・配信・普段聴きまで守備範囲が広い。作業と趣味の比率が半々なら、こういうタイプがラク。
“基準”を体に入れたい人は SONY MDR-CD900ST が気になるはず。良くも悪くも粗が出るので、最初は「うわ、シビア」と感じることもある。ただ、ここで作った音が外で崩れにくい感覚は、目的に合う人には刺さる。
宅録や配信で「録りの時に音漏れさせたくない」なら、密閉の定番が強い。例えば beyerdynamic DT 770 PRO は遮音と情報量のバランスで名前が挙がりやすい。耳に入ってくる情報が多いので、ノイズや息の入り方もチェックしやすい。
一方で、長時間ミックスで疲れにくさを優先するなら開放寄りを見たい。スピーカーの代わりにはならないけど、広がりの感覚が掴みやすいモデルとして Sennheiser HD 560S は候補に置きやすい。こもり感が苦手な人にも向く。
「密閉でフラット寄りを狙いたい」なら AKG K371 のような方向性が合うことがある。低域が必要以上に盛れないほうが作業しやすい、というタイプにはハマりやすい。
編集やチェック用途で、細部をサクッと見たい人には Shure SRH840A のような選択肢も出てくる。音の違いが分かりやすい方向のチューニングだと、修正ポイントが迷子になりにくい。
もう少し現場っぽい使い方、例えば「録音から編集まで同じキャラで回したい」「持ち出しも視野」なら SONY MDR-7506 みたいな定番が合うことがある。軽さや取り回しが効いてくると、結局使う頻度が上がる。
最後に、予算が許して“ヘッドホンでミックス精度を上げたい”に振り切るなら Neumann NDH 30 のような上位も視野に入る。ここは趣味の満足だけじゃなく、作業時間の短縮に直結する人がいるゾーン。とはいえ、最初から無理に行かず、今の環境と目的で回収できるかを考えたい。
どれを選ぶか最後に迷ったら
夜作業や録りがあるなら密閉寄りから、長時間ミックス中心なら開放寄りから。PC直挿しなら鳴らしやすさ優先。ここを外さなければ、あとは“自分が毎日つけられるか”で決めていい。
おすすめを探す時間が長引くほど、制作は先延ばしになる。まずは1本、基準になる相棒を決めよう。そこから耳が育つ。


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