DS1825を導入しようと決めたあと、いざドライブを選ぶ段階で「このHDDは本当に動くのか」「SSDを混在させても大丈夫か」と迷うことは多い。とくに、映像編集用の大容量ストレージとして5400rpmのドライブを検討している場合、回転数が性能にどう影響するか、互換性リストのどこを信用すればいいのかが気になる。
実際、メーカーが公開している互換性リストを見ても、型番が多すぎてどれを選べばいいのかわからない、あるいは掲載されていないドライブを使いたくなったときの判断に困るという声はよく聞く。そこで、DS1825のドライブ選びで失敗しないために、公式リストの読み方と、用途に応じた確認の順序を整理する。
まずは「動く」と「推奨」の違いを理解する
DS1825に限らず、SynologyのNASでは「互換性」という言葉が複数の意味で使われる。ドライブが物理的に認識されることと、メーカーが動作を保証し、サポートを提供するかどうかは別問題だ。
Synologyの互換性リストは、Synology 製品互換リストで確認できる。ここで「対応」と表示されるドライブは、メーカーが検証を完了し、DSM上で正常に動作すると認めたものだ。一方、「非対応」やリストにないドライブでも、物理的には認識されるケースはある。しかし、その場合はパフォーマンス低下や突然の認識不良が起きても、公式サポートを受けられない可能性が高い。
とくに、DSM 7.3以降ではドライブ互換性ポリシーが厳格化されており、非対応ドライブを使うと警告が表示されたり、一部の機能が制限されたりすることがある。購入前に2025年以降の Synology ストレージシステム向けドライブ互換性ポリシーに関するよくある質問を読んでおくと、思わぬトラブルを避けられる。
5400rpmドライブを選ぶときの落とし穴
映像データの保存や、頻繁にアクセスしないアーカイブ用途では、5400rpmの大容量HDDはコストパフォーマンスが高く、消費電力や発熱も抑えられる。しかし、DS1825で複数台を同時に使う場合、次の点を確認しておかないと、あとで「遅い」と感じることになる。
シーケンシャル転送とランダムアクセスの差
5400rpmのドライブは、連続した大きなファイルの読み書きでは十分な速度が出るが、小さなファイルのランダムアクセスや、複数ユーザーが同時にアクセスする環境では、7200rpmドライブやSSDに比べて体感速度が落ちる。とくに、DS1825の内蔵2.5GbEポートを活かそうとすると、ネットワーク側の帯域にストレージが追いつかず、ボトルネックになることがある。
公式スペック上、DS1825は2,239 MB/秒のシーケンシャル読み取りをうたっているが、これはSSDキャッシュやRAID構成によって達成される値であり、5400rpm HDD単体ではこの速度は出ない。実際の転送速度は、使用するドライブの台数とRAIDレベルに大きく依存する。
振動とエラーレート
8ベイすべてにHDDを搭載すると、筐体内の振動が無視できなくなる。5400rpmは7200rpmより振動は少ないが、それでも複数台が同時にシークすると共振が発生し、一部のドライブでリードエラーが増えることがある。とくに、NAS用ではなくデスクトップ向けの廉価モデルを流用すると、エラーリカバリーの動作がNASに最適化されておらず、RAIDからの脱落が起きやすくなる。
互換性リストに載っているドライブは、このような振動環境でのテストも考慮されているが、リスト外のドライブではその保証がない。
ストレージ設計を先に決める
ドライブの型番を選ぶ前に、まず「どのようなストレージプールを組むか」を決めておかないと、互換性リストを見ても判断がぶれる。
動画編集用ボリュームとアーカイブ用ボリュームを分ける
映像編集でDS1825を使う場合、編集用の高速ボリュームと、完成したデータを保存する大容量ボリュームを分ける構成が現実的だ。編集用にはSSDや7200rpm HDDのRAID 0またはRAID 10を割り当て、アーカイブ用には5400rpm HDDのRAID 5やRAID 6を使う、といった具合である。
M.2 NVMeスロットが2基あるため、SSDキャッシュを設定する手もあるが、動画編集のように大きなファイルを連続して読み書きするワークロードでは、キャッシュの効果は限定的になりやすい。むしろ、編集用のデータを直接SSDボリュームに置くほうが、安定したパフォーマンスを得られる。
RAIDはバックアップではない
DS1825に限らず、RAIDは可用性を高める仕組みであり、バックアップの代わりにはならない。うっかりファイルを消してしまった場合や、NAS本体の故障、ランサムウェアの被害に備えるには、外部メディアやクラウドへのバックアップが必須だ。
SynologyのHyper Backupを使えば、USB HDDや別のNAS、クラウドストレージへ定期的にバックアップを取れる。とくに、映像データは容量が大きいため、バックアップ先の容量と転送時間をあらかじめ計算しておく必要がある。
互換性リストの歩き方
実際にSynology 製品互換リストを開くと、ブランド、容量、回転数、インターフェース、ファームウェアバージョンなどが一覧表示される。ここで迷わないためのポイントを挙げる。
「対応」の意味を確認する
リスト上のステータスが「対応」になっていれば、その型番の特定のファームウェアで動作検証が済んでいる。ただし、同じ型番でもファームウェアが異なると動作が保証されない場合があるため、購入時にファームウェアバージョンを指定できるわけではない点に注意が必要だ。
実際には、互換性リストに掲載されているドライブであれば、よほど古い在庫でない限り、出荷時のファームウェアで問題になることは少ない。しかし、もし認識しない、パフォーマンスが出ないといった症状が出たら、まずドライブのファームウェアを確認する手順が有効だ。
「非対応」の理由を読む
互換性リストで「非対応」とされているドライブをクリックすると、理由が表示されることがある。たとえば、「NAS用に最適化されていない」「エラーリカバリー制御が不十分」といったコメントが書かれている場合、そのドライブをDS1825で使うと、RAIDの再構築中に脱落するリスクが高い。
とくに、デスクトップ向けの安価なHDDを8台並べて使うと、1台の故障時に再構築している最中に別のドライブがエラーを起こし、ボリューム全体がクラッシュする可能性がある。このリスクを避けるには、NAS用またはエンタープライズ向けと明記されたドライブを選ぶのが無難だ。
M.2 SSDの互換性も忘れずに
DS1825は2基のM.2 NVMeスロットを搭載しており、キャッシュとして利用できる。こちらの互換性リストも別途用意されているため、HDDと同じページのタブを切り替えて確認する。
キャッシュ用のSSDは書き込み耐久性が重要になるため、TLCやMLCタイプの耐久性の高いモデルを選ぶ必要がある。QLCの安価なSSDをキャッシュに使うと、短期間で寿命を迎えてしまい、キャッシュが無効になるだけでなく、データの整合性にも影響が出ることがある。
DSM上での確認と設定
ドライブを物理的に取り付けたあとは、DSMの「ストレージマネージャー」で認識状況とSMART情報を確認する。ここで「正常」と表示されても、互換性リストにないドライブの場合は、先述のポリシーによって警告が表示されることがある。
SMART値の見方
SMART情報では、読み取りエラーレート、スピンアップ時間、再割り当てセクタ数、温度などが確認できる。とくに、再割り当てセクタ数が増加傾向にある場合は、早めに交換を検討する。
DSMの通知設定を有効にしておけば、SMARTの閾値を超えたときにメールやプッシュ通知で知らせてくれるため、常時監視の手間が省ける。
ドライブのファームウェア更新
Synologyは、互換性リストに掲載されている一部のドライブに対して、DSM上からファームウェアを更新する機能を提供している。ストレージマネージャーの「HDD/SSD」タブで、該当するドライブが表示されている場合、ファームウェアの更新が可能だ。
リスト外のドライブではこの機能は利用できず、メーカー製のツールを使ってPCに接続して更新する必要がある。
障害時の復旧手順をあらかじめ確認する
DS1825に限らず、RAIDを組んでいる場合、ドライブが1台故障しただけではデータは失われない。しかし、その後の対応を誤ると、ボリューム全体がクラッシュするリスクがある。
ホットスペアの考え方
8ベイのうち1台をホットスペアとして予約しておけば、ドライブ故障時に自動的に再構築が始まる。ただし、その分使える容量が減るため、コストと可用性のバランスを考える必要がある。
映像編集用のボリュームでは、ダウンタイムを最小限にしたいため、ホットスペアを設定する価値は高い。一方、アーカイブ用のボリュームでは、故障したら手動で交換して再構築する運用でも問題ない場合が多い。
再構築中の負荷
大容量のHDDでRAID 5やRAID 6を組んでいると、再構築に数日かかることがある。その間、他のドライブに高い負荷がかかり、連鎖的に故障するリスクが高まる。とくに、同じロットの同じ型番のドライブを同時期に購入して使っていると、1台が故障したタイミングで他のドライブも寿命が近い可能性がある。
このリスクを減らすには、異なるロットのドライブを混ぜて使う、RAID 6で二重パリティにする、定期的にSMART情報を確認して予兆を捉えるといった対策が有効だ。
構成が合う人・合わない人
DS1825は8ベイの拡張性と2.5GbEの標準搭載、25GbEへのアップグレードパスを持つが、使い方によってはオーバースペックになったり、逆に性能不足を感じたりする。
向いている人
- 映像編集のアクティブプロジェクトをNAS上で直接扱いたい人。10GbE以上のネットワークとSSDボリュームを組み合わせれば、内蔵ストレージに近い感覚で編集できる。
- 複数人で同時にアクセスするワークグループ。Link AggregationやSMBマルチチャネルを設定すれば、帯域を束ねて快適に使える。
- 長期的にデータが増え続ける環境。拡張ユニットを追加すれば、最大432TBまで容量を拡張できる。
向いていない人
- 個人のバックアップや写真保存が主目的。2ベイや4ベイの下位モデルで十分な場合が多く、コストが見合わない。
- すでに10GbE環境を持っていて、より高速なNASが必要な人。DS1825のPCIeスロットは1基のみで、ネットワークカードを追加すると他の拡張ができなくなる。
- 予算を抑えたい人。本体価格に加えて、8台分のNAS向けHDDを揃えると、ドライブだけで数十万円になる。
購入前に確認しておくべきこと
最後に、DS1825を導入する前に、公式情報を中心に確認すべき項目をまとめる。
- 互換性リストで使用予定のHDD、SSD、M.2 SSDが「対応」になっているか。とくに、5400rpmドライブを使う場合は、リストに掲載されているNAS向けモデルかどうかを確認する。
- DiskStation DS1825+ 製品ページで、最新のファームウェアとDSMのバージョン要件を確認する。
- 拡張ユニットを使用する場合、対応機種と接続方法を互換性リストで確認する。
- 保証期間と、初期不良時の交換手順を販売店とメーカーの両方で確認する。
- 消費電力と発熱量を考慮し、設置場所の電源容量とエアフローが十分か確認する。
よくある疑問
Q. 互換性リストにないドライブでも使えますか?
A. 物理的には認識されることが多いですが、DSM 7.3以降では非対応ドライブに対して警告が表示され、一部機能が制限される可能性があります。また、サポート対象外となるため、トラブル時にメーカーの支援を受けられません。
Q. 5400rpmのドライブで4K動画編集は可能ですか?
A. ビットレートの低いファイルや、プロキシ編集であれば可能ですが、高ビットレートの素材を直接扱う場合は、SSDキャッシュやSSDボリュームの利用を推奨します。ネットワークが2.5GbEであれば、HDD単体の速度がボトルネックになる場面が多くなります。
Q. SSDキャッシュは必要ですか?
A. ランダムアクセスの多いデータベースや仮想マシンのストレージには効果的ですが、動画編集のようなシーケンシャルアクセスが中心のワークロードでは、キャッシュよりもSSDボリュームにデータを置くほうが効果的です。
Q. 8台すべて同じ型番のドライブで揃えるべきですか?
A. パフォーマンスの均一性を考えると同じ型番が理想ですが、前述のとおり連鎖故障のリスクがあります。予算と相談しながら、異なるロットやメーカーのドライブを混在させることも検討してください。
Q. 拡張ユニットを追加する際の注意点は?
A. 拡張ユニットと本体の接続には専用のeSATAケーブルを使用します。帯域が共有されるため、拡張ユニット側のドライブに頻繁にアクセスすると、本体側のパフォーマンスにも影響が出ることがあります。
DS1825のドライブ選びは、互換性リストの「対応」ステータスを確認することから始まるが、それだけでは不十分だ。自分の用途に合った回転数、RAIDレベル、バックアップ設計まで含めて考えることで、導入後の「思っていたのと違う」を防げる。とくに、5400rpmドライブを映像編集用に使う場合は、速度面での妥協点をあらかじめ把握しておくことが、失敗しないための第一歩になる。

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